人生に迷い悩む時 何度でも読み返したい名著「嫌われる勇気」
人が悩みを持つときの大半は、対人関係に由来するものと言われています。
職場での悩みや、学校での悩みなどを思い返してみると、それは人間関係に関することではないでしょうか。
友達の輪の中に入れない。
いつも意地悪なことを言ってくる奴がいる。
先輩が無茶なことばかり言う。
上司がパワハラまがいなことを言ってくる。
自分の実力を会社が正当に評価してくれない。
お客さんが商品を買ってくれない。
など、一見人間関係に見えないような悩みも、深く掘り下げてみると、たいてい人間関係の悩みであることがほとんどです。
目次
嫌われる勇気とは
「嫌われる勇気」は、2013年にダイヤモンド社から発行された書籍で、精神科医・心理学者・社会理論家のアルフレッド・アドラーの「アドラー心理学」を解説したものです。
本書内では、哲人と青年の対話形式で話が進められていき、悩める青年が多くの疑問を投げかけ、哲人がそれに答えることでアドラー心理学の考え方を説明していきます。
詳しい内容は本書に譲ることにして、この本から得られる知識と現代について考察してみます。
トラウマは存在しない
本書において、「トラウマは存在しない」としています。
現代では精神的な病が認知されてきて、多くの会社でメンタルサポートやストレスマネジメントの対策が行われています。
また、政府主導の働き方改革によって、労働時間や雇用形態について、今までないがしろにされて、不遇な中で働いてきた人たちへも、支援の手が差し伸べられ始めました。
働き方改革とは?政府の施策と企業が取り組むべき課題を基礎から解説 | 福利厚生のRELO総務人事タイムズ
メンタルな部分が語られることが多くなった昨今で、過去の体験がもとで心に傷を負い苦しんでいるような場合に、トラウマのせいだということになりますが、それを否定しています。
過去にどんな経験をしたかによらず、その経験にどんな意味を与えるかは自分の選択だとしています。
その経験が自分を苦しめるものだという決定をするのか、そんなこともあったのだと過去のものとして踏み台にしていくのか、取るに足らないことだとして忘れていくのか、あるいは自分が成長をするために必要な経験だったのか。
与える意味によって、自らを決定するのです。
人は変わることができる
確かに過去の経験は、今の自分には関係のないものです。
今の自分がどんな人間でどんな行動を起こすかは、今決めるものであって、過去に左右される必要などありませんね。
過去になにがあっても、人は変わることができます。
いつも遅刻ギリギリで出社する人も、明日から30分早く出社することは可能です。
昨日まで1日中ゲームをしているような生活でも、今日から1日1時間、勉強をはじめることは可能です。
友達がいないという人も、気が合いそうな人に声をかけることは可能です。
どんなに不安で、その行動に勇気が必要であったとしても、人はそうなりたいと思う自分に変わることができます。
ただ、変わらない人というのは、今の自分から変わらないぞという決心をしている、と本書は言います。
いろいろと不満があったとしても、今の自分でい続ける方が楽な選択肢だからです。
その選択を自分で行っていることに気付かない人が、不満を言い続けているのですね。
会社の待遇に不満がありながらも、なにも変わらずにいつも通り仕事をする人。
成績が伸び悩んでいるにも関わらず、今のやり方を変えない人。
ダイエットしたいと思いながらも、なにも行動を起こさない人。
変わることができるのに、変わらない方が楽だということで、自ら不満の中に身を置く行為をしていると考えると、なにかおかしいですね。
人生の意味
またアドラー心理学では「一般的な人生の意味はない」としています。
人生の意味がないなんて言い切るとは、かなり衝撃的ですね。
生きている意味はなんなんだろう、そんなことを考えたことがない人なんていないですよね。
その答えが、意味などない、と言っているのですから。
そして本当に言いたいことというのは、人生の意味というのは、与えられているものではなく、自分自身に与えるものだ、といいます。
生まれついた家によって、国や地域によって、生きやすかったり生きにくかったりする不条理で不合理な世界だからこそ、この「生きる意味は自分自身に与えるもの」という考え方は不変のものだと思います。
生きる意味が全く見えていない状態だと、生きる目標というものも定まりにくいと思います。
日々なんとなく生きていて、それを良しとするのもいいですし、それが自分の生き方だというのもいいと思います。
誰もが幸せに生きたいと願う世の中で、他人によって与えられる幸せなど存在しないことは明白です。
自分が自分に対して生きる意味を与え、幸せに生きるために自分を今から変えていく決心をする。
哲人の静かな語り口に、こうした力強いメッセージが秘められているのを、読者はひしひしと感じることになります。
自分の身に置き換え、今の自分があることの原因がなんなのか、過去になにかがあって、そのせいで今の自分はこんなに不幸なんだと、考えがちですし、そう考えた方が楽なのは確かです。
ですが、過去にとらわれている時間よりも、未来に向けて一歩を踏み出す方が、心地いいものです。
その一歩を踏み出すヒントをこの哲人と青年のやり取りから感じ取れるのではないでしょうか。
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